インタビュー・執筆:編集者 猫塚 駿
語り:小説家 宇田 侑平
――原作小説『帳月』から分岐し、再構築された世界を描く朗読劇『帳月 Rebirth』の原作・脚本・演出を担う宇田侑平に、企画の発端から作品の核、稽古場で得た手応え、そしてキャスト陣への印象を訊いた。
きっかけは「対抗心」だった
――帳月を「朗読劇」という形で届けようと思った理由は?
宇田:今から二年ほど前でしょうか。静岡の西にいるライバル作家が、自身の小説を原作に朗読劇をやっていました。確か渋谷にある小劇場だったはずです。で、「奴にできることならば、俺にもできるはずだ!」という、強い対抗心から、企画立案に至りました。
作品が抱くテーマは「負け方」
――物語を通して伝えたいことは?
宇田:「負け方」です。これに尽きます。ただ、外側から見て他のメッセージを感じ取ることは、可能です。ご自身の目で確かめてください。
「Rebirth」に込めた再生と再構築
――演目「帳月 Rebirth」に込めた意味は?
宇田:原作小説「帳月」は、隔たりの向こうにある幻想という意味で組み立てました。今作はRebirthです。再生です。再構築された世界に、どんな隔たりがあるのか、どんな幻想があるのか、考えながら楽しんでください。
分岐した物語の見どころ
――原作ファンの方に「ここは絶対に楽しみにしてほしい」と言えるポイントは?
宇田:原作の「ある時点」から分岐した物語です。小説家・正木が、完全アウェイな劇団という環境でどう立ち回るのか。そして役者・戸田美月が、どんな選択をするのか。原作を知っている方ほど、「そっちへ行くのか」と思っていただけるはずです。
稽古場で確信した「自分の作る人間の面白さ」
――実際に稽古を見て、原作者として新たな発見はありましたか?
宇田:現場では教えてもらうことばかりでした。私は人間とシナリオを作るだけの存在ですから。でも、役者、スタッフの皆様とディスカッションを重ねる中で、改めて思ったんです。やっぱり、自分の作る人間は面白いな、と。それを、実力派の役者たちが証明してくれています。
キャストの印象
――それぞれのキャスト、そして自身が生み出したキャラクターへのコメントがあれば、お願いいたします。
以下、宇田コメント
戸田 美月役:立花 風香
戸田は、今作において最も重要な語り部の役割を担っています。立花さんは、そのことをよく理解してくださっている印象です。先輩が多い現場でも自然とリーダーシップを発揮し、他の皆様をまとめてくれています。戸田美月というキャラクターは、誰の目から見ても魅力的です。実際、オーディションでも希望者が非常に多かった役です。その中で、彼女にしか出せない温度を掴み取れた、やはり私は審美眼のある作家だなと、自分を褒めてあげたい気分です。
三浦 鈴役:川石 奈奈
川石さん演じる三浦は、曲者の正木に対して強い嫌悪感を抱き、その感情を言語化します。本読みの稽古では、あまりの言い草に、横で聞いていた正木役の新井さんが悲しそうな目をするシーンもありました。それが非常に面白かったので、私は彼女に「もっと大げさにしてください」と無茶な注文をしました。そんな無茶な注文でも、快く引き受けてくださる技量と、丁寧な遊び心が、川石さんの魅力だと思います。
正木役:新井 ユウト
正木という曲者の「生き様」に対して、勇猛果敢に挑戦してくださっています。稽古場での立ち振る舞いを見ると、とても勤勉で責任感の強い方だなという印象です。今作における正木は、風です。物語をかき乱し、運んでいきます。だからこそ、彼がどう背負い、どう壊し、どう立つのか。仕上がりを、楽しみにしています。
悪原役:高橋 改
私は、他の人間よりも良い文章を書ける自信があります。しかし、次の言葉を見つけるまでとても時間がかかります。頭の回転が遅いことも自覚しています。そんな私がつい言い淀んでしまうところで、高橋さんの口から核心を突く言葉が出てきた時、役者という存在の真髄を、見せつけられた気がしました。悪原という役柄は、大車輪です。彼なくしてこの物語は動きません。そんな重大な役を、高橋さんにお任せできて、本当に良かったと思います。
溝口役:タカユウ
顔合わせの日、実際に本読みに入って、彼の姿が一発で溝口と重なりました。真・雀鬼11で、隻腕の麻雀打ち城島に見守られながら雀鬼に挑む中原誠也のような、凛とした様相が見えたんです。だから私は早い段階で「そのままでお願いします」と伝えました。溝口というキャラクターを演じられるのはタカユウさんしかいないと、強く思っています。それくらい、ハマり役です。
原田役:吉野 ゆりか/田島 智
吉野さんは、器用な方です。こちらの指示がスパッと通ります。もしかすると、今作について悩みや不安を抱えているかもしれませんが、それを感じさせない安定感があります。寡黙だが思慮深い原田に、最も忠実な雰囲気を醸し出せるのは、間違いなく彼女です。
田島さんは、他のキャラとの絡みが良いです。原田特有の「静観」という動きを、安直ではなく斬新に表現できていると思います。ただ演じるべき人物がそこにいて、一方的に近づくのではなく、引き寄せつつ向かっていくという、役作りをされている印象です。
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